血液内科
内科の病気の中で血液や骨髄、リンパ腺に起こる病気、とくにいろいろな貧血、出血傾向、血液やリンパ腺のがん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)などを担当する診療科です。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
免疫成分の一つである抗体が赤血球を破壊し貧血を起こしてしまう病気です。
犬ちゃんでは自己免疫によるものが多く猫ちゃんでは白血病ウイルスなどが原因でおこることが知られています。重篤な急性の場合は死亡率が高く(30~80%)血栓症やDIC(播種性血管内凝固)などを併発してしまうこともあります。また赤血球以外にも血小板や白血球に抗体ができ同時に減少することもありますので注意が必要です。
マルチーズ、プードル、コッカースパニエル、オールド・イングリッシュ・シープドッグ、アイリッシュ・セッターなどの犬種に多い。一般にメスの発症頻度はオスに比較して約3~4倍と高く、2~8歳に発症することが多いです。
この病気の臨床症状は基本的には急性貧血に伴うもので、「元気がない」「食欲がない」「歯茎や結膜が白くなる」「呼吸が速くなる」「脈がはやい」などがあります。
また、「水をたくさん飲む」「嘔吐」などの消化器症状がでることもあります。
「黄疸」を伴う事が多く、「ヘモグロビン尿(赤色尿)」「発熱」がでることがあります。
免疫抑制療法を行います。通常副腎皮質ホルモン剤を初めに用いますが反応が悪い場合その他の免疫抑制剤が併用されます。さらに反応がみられない場合ヒト免疫グロブリンの投与やステロイドのパルス療法を実施することもあります。治療は数カ月間続ける必要があり、この間免疫力の低下による感染や副腎皮質ホルモン剤の副作用に注意をする必要があります。再発性や難治性の場合に脾臓の摘出が適応されることもあります。重度の血色素血症や自己凝集がみられるもの、血小板の減少を伴ったものは予後が悪い傾向があります
タマネギ中毒
犬ちゃんがタマネギまたはネギの成分を摂取するとことで、有機チオ硫酸化合物が赤血球を傷つけてしまい、赤血球が体の中で破壊されますことで、溶血性貧血が引き起こされます。タマネギだけでなく、ネギ・ニンニク・ニラなどのネギ類でも同様の成分が含まれており、中毒を引き起こします。タマネギ中毒を引き起こす量は個々の犬ちゃんにより異なり、ネギ類を直接口にしていなくてもネギからしみ出した汁をなめてタマネギ中毒になることもあります。
ハンバーグ・すき焼き・味噌汁などネギ類を使った料理はたくさん存在しますので、意識して犬ちゃんが口にしないように注意する必要があります。
・元気がない
・食欲がない
・尿が茶褐色や濃い通常よりかなり濃い色になる
・皮膚や粘膜が黄色くなる
・粘膜が白っぽくなる
タマネギ中毒は発症までに数日かかることもあり、食べた直後に元気だからといって、発症しないというわけではありません。
タマネギ中毒の解毒剤は無いため、ネギ類を口にしたばかりであれば催吐処置で少しでも多く吐き出させ、活性炭の内服で中毒成分を吸着させるなどの方法で体内に吸収されないようにします。
さらに輸液療法(点滴)を行い、原因物質が少しでも尿中に排泄されるようにします。
貧血が起こっている場合、輸血を行って減少した赤血球を補います。
呼吸が苦しい場合は酸素室に入って治療を行うこともあります。
タマネギやネギ類を少しでも口にするようなことがあれば、お気軽にご相談下さい。
バベシア
バベシア症はバベシアに感染しているマダニに犬ちゃんが吸血され感染します。体内に入ったバベシアは血液中の赤血球に寄生して、赤血球を破壊しながら増殖します。
バベシア症を疑れたときは、赤血球を顕微鏡でバベシアの寄生が確認できることがありますが、寄生数が少ない場合やタイミングによっては、顕微鏡での観察だけでは寄生が分からないこともよくあり、複数回の検査やバベシアの遺伝子を検出するPCR 検査を行うことがあります。
犬の赤血球を破壊するため、貧血症状や血色素尿(赤血球の中の赤い色素による赤い尿)がみられます。またその他に元気消失、発熱、黄疸、脾腫などの症状もみられ、命にかかわる場合もあります。
一般的にバベシア原虫を抑える効力のある抗生剤の投与となります。しかしながら、バベシアを完全に駆除することは難しく、症状が改善してもほとんどの犬ちゃんの場合バベシアが体の中に潜んでいる無症状のキャリアになるので、体力や免疫力が低下したときなどに再発することがあります。
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンを積極的に受けつけていますので、病気の診断や治療への不安や疑問を持たれている方はお気軽に相談下さい。
現在治療中の方は、分かる範囲で構いませんので、今までの治療経過(お薬の内容、状態の変化など)のメモや検査結果のご用意をお願いします。診断、治療の参考になります。
またセカンドオピニオンは大変時間がかかる場合がありますので、事前にご連絡を下さい。必要に応じて予約診療とさせていただくことがあります。